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能登の音風景 叩き堂祭り


 2.祭りの始まり

■祭りの始まり
写真4:拝殿に供えられたバイ、シロモチ、タラ。
写真4:拝殿に供えられたバイ、シロモチ、タラ。
 「若木迎え」で切った枝は拝殿内に置かれている。拝殿は普段、地域の集会所としても使われるため、床には畳が敷いてある。「叩き堂」の名のとおり床を叩くため、中央部の畳ははずされて、床板が見える状態にされる。祭りに使うバイ、シロモチは神前に供え置かれている。生け贄の代わりであるタラも後から供えられる。夕刻、徐々に神社拝殿に人々が集まってくる。しだいにざわざわと落ち着かない雰囲気になってくる。
写真5:配膳された祭り料理。
写真5:配膳された祭り料理。
 徐に祭りが始まる。まず、拝殿内に料理を並べる。ヤスマといって、長方形の角を落とした八角形の膳が正式なものらしい。膳や食器は各自の家庭から持ち寄ったものである。にぎやかに座に着き、上座から順にお神酒をいただく。シロモチもひとかけらずつ配られる。

■「マナイタナオシの儀」
写真6:料理人は生け贄に見立てたタラをさばく。
写真6:料理人は生け贄に見立てたタラをさばく。
 全員の料理がそろうと、「マナイタナオシの儀」が行われる。これはタラを刺身にするものであるが、タラは生け贄、料理人はヒヒと見立てられている。タラは通常行われるように三枚におろすのではなく、横に五つにまず切り分けられる。それから刺身にされ、配膳される。
写真7:氏子たちから丸餅が投げられる。
写真7:氏子たちから丸餅が投げられる。
 次いで、氏子たちは料理人に対して丸餅を投げつける。ヒヒを退治する力を丸餅は象徴している。力いっぱい投げつけられては料理人もたまらないので、現在は軽く投げ渡すといった形になっている。投げつけられた丸餅も料理人は五つに切って配膳する。一通り配膳が終わると、お膳は片付けられる。

■「カラチョウズの儀」
 「カラチョウズ」とは「空手水」、すなわち水なしで手を清めることを表す。茶道では手を洗う身振りだけを行うことをこう言うが、この祭りでは、赤タブの葉を水の代わりとみなしている。ご神木である赤タブには清めの効果があるとされたのだろう。この時、葉で体の悪い部分をなでると直るとも言われている。そのような霊験のあるものを得ようと「カラチョウズ」は綱引きのような状態になる。それほどあわてなくても十分手に入るのであるが、引っ張り合うのを楽しんでいるように見える。「マナイタナオシ」までは粛々と進行してきた祭りが、徐々に盛り上がってくるところである。
 
写真8:カラチョウズは綱引きのように枝を奪い合う。
写真8:カラチョウズは綱引きのように枝を奪い合う。
■「ハナマイの儀」
写真9:赤タブの枝を持って突進。周りはバイで床を叩く。バイで叩かれたあたりは床板の痛みが激しいので張り替えられているのが判る。
写真9:赤タブの枝を持って突進。周りはバイで床を叩く。バイで叩かれたあたりは床板の痛みが激しいので張り替えられているのが判る。
 しかし何と言っても祭りのクライマックスは「ハナマイ」である。カラチョウズがひと段落すると、それとは異なる赤タブの枝を持ち、拝殿正面に突進する。その両側には氏子たちが座り、硬いケヤキでできたバイを木の床に叩きつけ、ときの声を上げる。思い切り叩くので、ダンダン、ガタガタと床の鳴る音がすごい。このバイの乱打によって床は壊れても良い。むしろ壊れるぐらいの方が良いとされる。
赤タブの枝を掲げて神前に進み出ると、ろうそくを1本灯す。お参りの最中は太鼓に合わせて、規則的にゆったりと叩く。その後、神前から元の位置に戻るときも同じように赤タブの枝を掲げて突進し、氏子たちは再びバイを乱打する。これを全ての氏子が行い、祭りは終わる。
 
 かつてはこれには多くの子供たちが参加しており、拝殿をたたくというふだんであれば怒られてしまうようなことを楽しんでいた。子供たちが減り、この所作も徐々におとなしいものになってしまったという。
変わったのはそれだけでなく、いろいろなものが簡略化されているという。ヌルデの箸もただの祝い箸になった。お神酒を注ぐ銚子も2つあったものが1つになり、現在は使われていない。料理人の衣装もかつては裃をつけて演じたという。
武士がヒヒを退治したとすると、刀のような何らかの道具を使うところであろうが、その痕跡を示すようなものは一切ない。丸餅、バイの音の力でヒヒを退治するのだという。丸餅は人間の農耕という文化の象徴である。人間が手に入れた大きな力だ。また、鳴き声以外で音をコントロールできるのは人間だけである。音は実は強力な支配力を持つ。支配者層の力を象徴するものの一つに音(鐘や太鼓など)があるのは知られている。この祭りにおいては、人間の文化が自然に対しても支配力を持つことを、丸餅やバイの音で象徴させているのではないだろうか。
 

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