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のとだより
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学生プロジェクト

ドテラを着て
   キリコを担ごう


3.ヨバレ


 
 能登のお祭りにあって他のお祭りにはないものといえば、これまで紹介してきたキリコと、もう一つ、ヨバレだと思います。地区のお祭りの日に、遠方の親戚や日ごろお世話になっている人、友人たちを自宅に招き、ごちそうでもてなす風習が古くからあります。祭りに招かれることを、能登では「呼ばれる」といいます。それがいつしか、ごちそうでもてなされることがヨバレとなったようです。キリコを外のお祭りとたとえれば、ヨバレは家の中のお祭りです。(「金沢大お祭りトリオ」豊田祥子、林小百合、宇野文夫)
 

 去年9月、前回紹介した上野登起男区長さんのお宅でヨバレを体験させていただきました。私たちがおじゃましたのは夜9時ごろでしたが、家の中にはすでに30人ほどのヨバレのお客さんがいて、縁側のあるお座敷は障子戸も開けっ放しにされ、宴会が始まっていました。
 
「ささっとお入りなさい」「遠慮せんと、まま、上座へ」とすすめる上野さん。初めての私たちが座ると、隣席の男性の方から「べっぴんさんの隣やと緊張して、酒を飲まんでも(顔が)赤かくなるね」と声をかけられ、この場の雰囲気に一気に飲み込まれてしまいました。お客さん同士の会話も弾んで笑いが絶えません。落ち着いた中での楽しげな雰囲気は「にぎやか」より「和やか」という言葉がぴったりかもしれません。
 
 上野さんのお話では、お祭りのときは家族総出でもてなすので、3、4歳の子でもお客さんに座布団を出し、小学生や中学生の子も料理を運ぶのを手伝います。その家の主婦は数日前からお祭りの料理の仕込みをします。その家のご主人はホストとして接待役に回り、出迎えや見送りをします。外でキリコを担ぐのは高校生ぐらいからの若い男の人たち。だいたいそんな役割分担がされているようです。ちなみに、招かれるのはヨバレですが、もてなすことを「お客さんする」と言い、「きょうはお客さんする日で忙しい」などの使い方がされます。
 
雰囲気が楽しいだけではないですよ。当地の人たちがゴッツォと呼ぶ、お祭り料理も見事です。盛り付けも写真のように輪島塗の重箱にどんと盛り付けられていて、好きなものを欲しい分だけ取り分けるので大満足。

 ゴッツォを説明します。まず写真の左上が昆布巻き。祭りの前日からニシンの切り身をコンブで巻いて、コトコトと煮込んだもの。昔は囲炉裏に大きな鉄鍋をかけて半日ぐらいかけて煮込んだそうです。トロリと柔らかな舌触りは食感だけでなく、心身ともにホッとします。右上と左下は同じ煮しめ(煮物)です。具材はサトイモ、ニンジン、厚揚げ、ちくわ、こんにゃく、シイタケ、 さつまあげ、きぬさや。すべて地元産です。とくにシイタケは肉厚で歯触りがとってもいいんです。右下は焼きサバの膾(なます)です。焼いた塩サバをほぐしたものに、塩もみして水気を搾った千切りのダイコンとニンジンを混ぜ合わせ、甘酢で調味したもの。彩りも素敵です。

 ヨバレの客はお酒とその家の料理をゆっくりと楽しみ、そしてキリコが練り歩く光景を見物して帰ります。そんな祭りが10月上旬ごろまで能登のどこかの地区で行なわれています。
 
 ここでちょっと考えてみました。招いた人は今度ヨバレの席にあずかることになります。こうした「ハレの場」に幼いころから相互に行き来を繰り返すことで、招き、招かれる身のこなしが洗練されていきます。私たちを招いてくださった上野さんのお座敷の雰囲気を「和やか」と表現しました。この和やかさは「優しさ」、あるいは「癒し」と置き換えてもよいのかもしれません。前回紹介した映画「能登の花ヨメ」のポスターにも書かれてありましたが、能登の土地柄をいい表す言葉に「能登はやさしや土までも」がよく使われます。そんな土地の風土はひょっとしてお祭りが醸し出した文化ではないかと思ったりもしています。
 
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