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のとだより
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学生プロジェクト

能登はやさしや 塩の道


 2.塩釜リースで栄えた中居の鋳物
 

鍋(なべ)を一枚、二枚と枚数でカウントするということを知りませんでした。これまで、一つ、二つと数えていました。
能登エコ・スタジアム2008のバスツアーで訪れた穴水(あなみず)町の「能登中居鋳物(なかいいもの)館」でそんな小さな発見をしました。
鋳物館の学芸員の方の説明ですと、穴水町中居という集落は江戸時代中ごろ、鋳物の生産が盛んで40軒ほどの鋳物師(いもじ)がいたそうです。そして原料となる砂鉄や褐鉄鉱などが能登一円で産出され、中居に運ばれていました。
その技術は14世紀、朝廷が南朝(吉野)と北朝(京都)に分かれて対立し、その南北朝の動乱に巻き込まれた河内鋳物師が移住したことによるともいわれますが、定かではありません。ここからは歴史の話をしますね…。

 
玄関入り口にひと際大きい釜が並んでいます。直径1.6メートルほどで、塩釜(しおがま)と呼ばれ、昔は塩づくりに用いられたそうです。最盛期には2千枚もの塩釜が生産され出回ったとのこと。
その行き先は耕地の少なかった奥能登。加賀藩は慶長元年(1596年)に、農民救済のために「塩手米(しおてまい)制度」をつくり、能登の農民に玄米1石(※1石は約180リットル)を貸し与え、塩4.5石を納めさせたといわれます。
この制度はその後、藩による塩の専売制度(寛永4年=1627年)の基礎となります。中居の塩釜はこの制度とリンクしていました。

 
加賀藩には徴税能力に長けた知恵者がいたようです。当時貴重品だった塩釜は、塩士(しおじ)と呼ばれる能登の製塩業者に13年の分割払いで貸付けられました。これって、いまでいうリースですよね。1年のリース代は米ベースで5斗(0.5石)だったといわれます。13年分のリース代のうち、藩が6年分を、鋳物師が7年分を分け合ったのです。加賀藩は6年分を徴収する代わりに「諸役免除」と、運転資金となる「仕入銀」を鋳物師に与えました。13年のリース切れのものは塩士に払い下げられました。この「塩釜リース」は江戸時代初期の慶長10年(1605年)には塩釜835枚、中期の元文2年(1737年)年には塩釜2,000枚が貸し付けられたとの内容の古文書(複製)も展示されています。膨大な量の塩を独占した加賀藩は余剰となった塩を、相場をにらんで大阪に回したそうです。

 
面白いのは、このビジネスモデルを中居の鋳物師たちは独自に応用し、「貸鍋(かしなべ)」という、自作農民を相手にした鍋のリースも行っていました。「1升鍋」のリース代は年に米1升(1.8リットル)、2升鍋は米2升で無償修理としました。当時、鍋釜は高根の花だったようです。
これが当たってビークで3,000枚の鍋が出回ったそうです。鍋リースだけで中居には年100石の米が集まりました。塩釜や鍋のリースのほか、お寺向けの梵鐘の製造販売、武具や金具、厄払いの置物といえる鬼面の製造も行われました。
しかし、その後技術革新への取り組みが遅れ、衰退の道をたどることになります。
主力商品だった塩釜は底が深く、熱伝導が悪いものでした。同じ加賀藩の高岡鋳物で生産された浅釜は直径が長く、平底だったので格段に熱伝道がよかったのです。
そこで、能登の塩釜は次第に高岡釜に取って代わられることになります。元文年間には2,000枚を誇った貸付は、明治12年(1879)に600枚と激減します。そして昭和9年(1934年)、300年余り続いた塩釜リースは役目を終えることになりますが、このときはわずか51枚になっていたそうです。

 
これでこのページを終わってしまっては「中居の鋳物物語」は寂しすぎますよね。中居の鋳物の伝統は消え去ってしまったのか。いや、いまに生きていますよ。
天正9年(1581)、初代加賀藩主の前田利家は、中居から一人の有能な鋳物師を金沢に呼び寄せ、禄を与えて武具などの鋳造に当たらせます。宮崎義綱(よしつな)がその人。
その子・義一(よしかず)は、加賀藩に召し抱えられた茶具奉行の裏千家4代仙叟(せんそう)に師事し、茶の湯釜の製法を学び、多くの名作を残します。
仙叟から「寒雉(かんち)」の号をもらい、加賀茶の湯釜の創始者として藩御用釜師のステータスを得たのです。その技は代々の宮崎家に受け継がれ、「寒雉の釜」はいまも茶人の垂涎(すいぜん)の的になっています。中居鋳物の伝統はかたちを変えて現在に生き続けています。

 
能登中居鋳物館を後にして、バスは輪島に向かいました。輪島の千枚田=写真=はちょうど稲刈りのシーズンを迎えていました。海に突き出るようにして広がる棚田。おととしの5月に当時の小泉(純一郎)首相が千枚田を訪れ、「絶景だ」と叫んだそうです。私たち3人も「ピース」で決めました。
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